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【中国経済レポ−ト】
【中国経済レポ−ト】
講演抄録:中国バブル崩壊警戒−第390回中日懇話会講演要旨−

沈 才彬
『中日新聞』2007年9月29日

 第三百九十回中日懇話会(中日新聞社主宰)が九月二十八日、名古屋市中区の名古屋観光ホテルで開かれ、三井物産戦略研究所中国経済センター長の沈才彬氏が「過熱する中国経済の実相」と題して講演。「中国の今日の急速な台頭は誰も予測できず、世界中が心の準備ができていない。今後、どう向き合ってゆくのかが共通の課題」としながらも、環境や省エネルギー分野で、日本企業の出番が増えると予測した。

 講演要旨は次の通り。

 ●【政治の最新動向】

 中国の政治勢力には大きく、江沢民前国家主席の人脈である「上海閥」、胡錦濤国家主席の出身派閥である「団派」、親が高級幹部の「太子党」の三つがある。ことし十月の第十七回共産党全国代表大会で、高い経済成長や汚職追放、危機管理能力の発揮など一期目の実績で国民の支持の高い胡政権が続投して二期目に入る見通しで、そうなれば団派が台頭して上海閥は地盤沈下、バランス役としての太子党も活躍することになろう。

 ●【経済の実情と行方】

 高度経済成長が続く中国の経済界では今、経済が軟着陸するか、あるいは硬着陸なのか、論争が続いている。しかし、共産党の全国大会が開かれ、新しい執行部が生まれることしと、北京五輪で国を挙げて盛り上がる来年、経済成長が下がることはあり得ない。ただ、中国経済のバブルについて、朱鎔基前首相は「あるかないかの問題ではなく、いつはじけるかの問題だ」と懸念を表明したとされる。二〇一〇年の上海万博開催後は要警戒だ。

 ●【日本企業の進路】

 中国経済はエネルギー効率が悪く、日本の六分の一と低い。必要以上に素材やエネルギーを消費する「爆食経済」だ。中国政府も危機感を持っており、省エネ型の成長方式へ転換を図っている。日本企業はオイルショックを機に三十年余培った世界トップレベルの省エネ技術があり、これがビジネスチャンスとなる。私の試算では日本の最大の輸出先が一〇年には中国になり、米中逆転が起こる。日本はアジア、特に中国市場を視野に入れ、優れた技術やブランド力など長所を強め、コスト高など短所を弱める「揚長避短」の戦略が必要だ。