【中国経済レポ−ト】
中国への視点 「市場」と「工場」
沈 才彬
《世界週報》2002年12月17日
2002年8月2日、日本の川口外相はシンガポ−ルでゴ−チョクトン首相と会談した際、主な議題は「いかに中国を地域経済に取り込むか」であり、最後にゴ−チョクトン首相は「それが成功できなければわれわれは負け犬になる」と締め括ったという。ゴ−チョクトン首相の発言は「中国脅威論」を煽ったものとは思われないが、政治的にも経済的にも中国のプレゼンスが益々増すのは確かだ。
それでは、われわれは21世紀のス−パ−パワ−中国に目を向ける時、どんな視点が必要なのか。アメリカ企業はいまどんな中国戦略を描いているか。その背景にはいったい何があっかか。日本及び日本企業はこの巨大隣人と向き合うにはいったいどんな対策を取るべきか。本稿はこれらの問題を具体的に検証したい。
中国への「3つの視点」
今年4月12日、小泉首相と竹中経済財政政策担当大臣(現在は金融相兼務)はアジアフォ−ラム出席のため、中国の海南島を訪問した。その日の朝、筆者は竹中大臣に招かれ中国経済の現状、見通しと問題点につき約30分程度緊急進講を行った。進講の際、私は「バランスの視点」、「ビジネスの視点」および「グロ−バルな視点」という中国への3つの視点を強調した。
「バランスの視点」とは、現実の中国には依然として2つの顔があることをいう。1つは中国経済の光の部分を示す元気な顔であり、高度成長の持続、輸出と直接投資の拡大、産学連携の進行、産官学幹部の若返り、欧米留学組の台頭など数多くの中国エコノミックパワ−はその象徴的なものである。もう1つは影の部分を見せる病気の顔である。WTO加盟の衝撃、農民の収入減・負担増による離反・造反、雇用の悪化、腐敗の蔓延、金融リスクの増大など中国の裏の一面は、正に病気の顔の現れともいえる。われわれは中国を見る際、元気な顔と病気の顔を両方複眼的に捉えるというバランス感覚が必要である。過大評価の「中国脅威論」ではなく、過小評価の「中国崩壊論」でもなく、客観的に正しく中国を認識するリアルの「中国論」が求められている。
「ビジネスの視点」とは、中国は13億人口の巨大市場である一方、「世界の工場」ともなりつつあることをいう。日本企業は「市場」と「工場」の両方から中国を積極的に活用していくべきである。
「グロ−バルな視点」とは、日本と中国との関係を多国間の視点から捉えるべきことである。松本重治氏は『上海時代』(中公新書)という本の中で次のように述べている。「日本では欧米に目の向いている人は中国は視野に入らない。他方、中国の専門家だと思っている人は中国と日本の関係をもっと広い文脈で考えていない。しかしこれからの日本人は、西洋と中国の両方を復眼として持たないと、また不幸な経験を繰り返すことになる」と。中国のプレゼンスが益々増している21世紀に、中国と欧米を両方復眼的に見ないと大きなビジネスが出来ないと言っても過言ではない。この意味でわれわれは松本氏のこのメッセ−ジを21世紀のビジネス活動の指針とすべきであると思う。
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中国市場に活路を求めるモトロ−ラ
欧米企業、特にアメリカ企業はいまいったいどんな中国戦略を描いているか。これはわれわれ日本企業にとって大いに参考になると思われる。
IT(情報技術)バブルの崩壊によってビジネス戦略の見直しを迫られる欧米IT企業の多くは今、中国に活路を求めている。その典型的な例は米モトロ−ラである。
今年7月、筆者はモトロ−ラ中国研究院ネットワ−ク技術センタ−のゼネラル・マネジャ−である向軍氏に取材した。北京航空大卒、イギリス留学・勤務を18年経験した向氏は、オフィスを案内しながら、同社の中国戦略および中国進出の最新動向を説明してくれた。向氏によれば、モトロ−ラは、2001年度の決算で大幅な赤字(39億j)に転落し、いま経営立て直しを図っているが、最大の携帯電話市場である中国をめぐる戦略がその成否を握っている。
持続的な高度成長と国民の生活水準の向上を背景に、中国の携帯電話はいま急ピッチで普及している。01年に、中国の携帯電話ユ−ザ−数は前年末比70%増の1億4480万人に達し、米国を上回り世界1位となった。今年に入って、新規加入者数は月ごとに500万人と増え続け、8月末現在のユ−ザ総数は1億8500万人に達した。携帯電話の保有台数は世界最大になったにもかかわらず、その普及率が依然14.6%という低い水準にとどまり、中国市場の潜在力の大きさが窺がえる。
モトロ−ラはこうした成長中の巨大市場に照準を合わせ、会社の命運をかけて中国戦略を描いている。その具現は最近発表された同社の「3つの100億ドルプラン」である。
「3つの100億ドルプラン」とは、06年までにモトロ−ラの対中直接投資、中国での販売及び中国での調達いずれにおいても100億ドルに達成する計画である。モトロ−ラはこれまで34億ドルを中国に投資し、その現地法人天津モトロ−ラは昨年、7年連続中国外資系企業売上ランキング1位をキ−プしてきた上海VWを破り、中国最大の外資系企業となった。「3つの100億ドルプラン」は同社の世界における人的・物的・資本資源を再編し、中国に集中させるグロ−バルな戦略と言える。
この戦略を実現するために、同社はいまR&Dの中国シフトおよびそれに伴う人材と研究・開発設備のシフトを行っている。向氏によれば、2001年までにモトロ−ラの対中R&D投資は3億ドル、北京、上海をはじめ全国各地に18のR&Dセンタ−を持ち、R&D要員は1000人を超え、在中国外資系企業の中では最も多いという。現在、モトロ−ラ中国研究院は半導体技術、IC(集積回路)チップ、先端素材、ソフト開発、個人向け通信製品開発、最新モバイルテレコム解決案、PowerPCの応用・開発などの先端分野において研究・開発を行っている。また、同社では06年までに対中R&D投資は13億ドル、R&D要員を5000人に増やす計画も立てられている。
筆者が取材した時、同社の欧州R&D拠点から中国研究院にシフトしてきた携帯電話向けの送受信システム設備は、オフィスビルの2フロアに詰められ、据付中の風景が目に入る。中国研究院の活気と対照的に、欧州における同社のR&Dセンタ−は来年中に閉鎖する見通しである。
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中国人材を活用するマイクロソフト
現在、欧米企業をはじめ外国企業は資金、生産拠点、R&Dと人材という4つの「中国シフト」を加速している。そのうち、R&Dと人材の中国シフトが特に目立ち、先頭に立っているのは米マイクロソフトである。今年7月、筆者はマイクロソフトのアジア研究院(北京)を訪れ、張亜群院長と尚笑莉広報部長に取材した。
アジア研究院の前身は中国研究院で1998年11月に発足。同社の米国研究院、英ケンブリッジ研究院に次ぐ3つ目の研究機関である。97年12月にビル・ゲイツ会長は清華大学で講演し、同大学の豊富かつ優秀な人材や抜群の研究開発能力などがビル・ゲイツ氏に強い印象を与え、これは中国研究院設立の直接的なきっかけとなった。
98年3月、マイクロソフトはシリコンバレ−のSGI社から同社の副総裁、台湾出身の李開復氏(元アップル社副総裁)をスカウトし、中国研究院長に当てた。発足当時、李・前院長(現マイクロソフト社副総裁)を含むスタッフは合計6名に過ぎなかったが、海外華人人材と現地人材活用で、今年6月末現在、350名(うち、純粋外国人5名を含む海外人材30名)に急増した。そのうち、張亜群現院長(ワシントン大博士)をはじめ、世界トップクラスの水準を誇る研究者は約30人もいる。彼らは中国で音声技術、デジタル技術、マルチメディア技術分野において最先端の研究を行っている。中国人材活用で実績を積み重ねてきた李前院長は、その能力をビル・ゲイツ会長に買われ、2000年に同社の副総裁にも抜擢された。
実際、R&Dの中国シフトに伴う中国優秀人材の集結は、アメリカ企業に限らず、欧州企業にも見られる。前出の向軍氏によれば、現在、ノキア、エリクソン、シ−メンスなど欧州IT大手も在中国R&D要員を大幅に増員し、いずれも500−1000人規模となっているという。今年に入って、欧米有力企業のR&D拠点が中国にシフトし、北京・上海に集結する動きは一層活発化している。エリクソンは最近、中国での研究・開発事業を統括する「エリクソン中国総合研究院」を北京で発足した。アメリカのGEは今年2月下旬、米国とインドに続く同社の3つ目の総合研究・開発拠点を上海浦東開発区で建設することを発表。多国籍企業が上海に設立したR&Dセンタ−は昨年11月時点で42だったが、今年2月末には67拠点に急増した。中国市場争奪に伴う中国人材争奪戦も一層激しさを増している。
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益々見えてくる巨大市場
01年、世界直接投資は前年比マイナス52%、主要受け入れ国が軒並みに大幅な減少に転落した中、中国の直接投資受け入れは契約ベ−ス金額で前年比10%増、実績ベ−スで14.9%増と独り勝ちのパフォ−マンスを示している。今年に入って、外資の中国シフトはさらに加速し、1−9月期の統計によれば契約ベ−ス38.4%増、実績ベ−ス22.6%増を記録した。
言うまでもなく、モトロ−ラ、マイクロソフトなどアメリカ企業が描いた中国戦略の背景にも、外資の中国シフト加速の背景にも、拍車がかかる中国市場の巨大化がある。
91−01年の11年間、中国の年平均GDP成長率は驚異的な9.9%に達し、経済規模は3.1倍増を実現した。GDP規模の世界における順位も91年の第10位(3792億ドル)から2001年の第6位(1兆1590億ドル)へと躍進した。経済規模の拡大に伴って、市場規模も膨張し、2001年の輸入総額は91年の3.8倍となっている。
中国経済の動きとして、今後2つの加速が予想される。経済規模拡大の加速と国民の豊かさの加速である。詳しい論述は拙稿「拍車掛かる中国市場の巨大化」(「世界週報」2002年7月30日号)に譲るが、結論だけを言うと、2000年に1兆ドル大台に上がった中国経済規模は、これから拡大加速に入り、2010年に2兆ドル強、15年に約3.5兆ドル、20年に約5兆ドル、25年前後に日本を追い越し世界第2位の経済大国になる可能性が高い。一方、持続的な高度成長の結果、中国の1人当たりGDPは2001年時点で既に900ドルを超え、今年に1000ドル近くになる。これからは国民の豊かさの実現がハイウェ−に入り、2010年に2000ドル台、15年に3000ドル台、20年に5000ドル台に近づく見通しである。
上記2つの加速によって、中国の市場規模膨張も拍車がかかり、2020年の市場規模は現在の5倍以上になる見通しである。現在、携帯電話や家電製品及びビ−ルをはじめ多くの分野では、中国の市場規模は既に世界1位を占めている。今年上半期、中国の鉄鋼消費量もアメリカを抜いて世界1位となった。今後、経済の高成長に伴って、世界1位を占める市場分野がさらに増えるだろう。
98-02年日本の輸出に占める中国(香港を含む)シェアの推移を追って見れば、巨大市場が益々見えてくる。財務省の統計によれば、01年、中国向けの輸出は3兆7,637億円に達し、98年に比べ43.6%も増えた。一方、米国向けの輸出は減少が続き、98年に比べて01年は約5%縮小した。その結果、日本の輸出全体に占める米国のシェアは低迷しているが、中国(含香港)シェアは98年の11%から01年の13.5%に上昇した。今年1−8月期の対中輸出もさらに前年同期比25.8%(円ベ−ス)増を記録し、香港を含むと日本輸出全体の15.3%を占めるようになった。
もし過去3年間の対中輸出(年平均伸び率13.2%)と対米輸出(同マイナス1.6%)をベ−スに計算すれば、2010年前後に米中逆転が視野に入り、中国(香港を含む)は米国の代わりに日本の最大の輸出市場となる。日本の景気動向は中国経済の行方に大きく左右され、13億人口の中国マ−ケットを抜きにして日本の産業発展を語れなくなる時代がやってくる。
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「世界の工場」を等身大に見る
外資の中国シフト加速の背景に、もう1つ理由がある。中国の世界工場化の進行である。豊富かつ安価な労働力、大量優秀な人材、割安な土地使用価格とサ−ビスコスト、外資優遇措置など、生産拠点としての中国の比較優位は外国企業にとって魅力が大きい。特に、上海市を中心とする長江デルタと広東省の珠江デルタの2大地域は産業集積が急速に進み、世界屈指の生産基地へ変身しつつある。
実際、主要工業製品の世界市場に占める中国と日本のシェアを比較すれば、「世界の工場」がいま日本から中国にシフトしつつある実感が出てくる。日本経済新聞の予測によれば、次の8品目工業製品の市場シェアは02年にいずれも中国が日本を凌ぎ世界1位を占める見通しである。そのうち、デスクトップPCが日本の12.9倍、携帯電話2.1倍、エアコン2.9倍、カラ−テレビ24倍、二輪車5.2倍、粗鋼1.4倍、ビデオテ−プレコ−ダ−19倍、DVDプレ−ヤ−7倍、ハ−ドデスク駆動装置(HDD)3.7倍と、素材からハイテク製品まで多くの分野で中国は世界を制覇している。
それでは、中国と日本という2つの「世界の工場」はいったい何が違うのか。まず、日本はかつて外国の先進技術を積極的に導入しながら、外資を極端に排除し「世界の工場」を築き上げた。つまり、そのステ−ジに主役が日本企業1人しかいなかった。それに対し、中国の場合は「国内企業」と「外資系企業」という2人の主役がいる。中国の発表によれば、今年9月末までに中国に進出している外資系企業は41万社、外国直接投資累計は契約ベース金額で8136億ドル、実績ベースで4347億ドルとなっている。莫大な外資は中国の経済成長に大きく貢献し、高度成長の原動力の1つともなっている。実際、01年中国GDPの17%、雇用の10%、設備投資の10.7%、鉱工業総生産の27%、鉱工業企業利益の29.2%、税収の19.0%、輸出の50.8%、輸入の51.7%が外資系企業によるものである(江小涓氏「国際貿易」誌2002年9月号論文、「経済研究」2000年9月号論文)。
一方、中国の国内企業も激しい国際競争を通じ、競争力が急速についている。2人の主役が互いに競争しながら、相互補完して中国の経済成長を牽引している。
2つ目の違いは産学連携にある。01年現在、中国の大学から生まれた産学連携型企業は約5000社ある。もし国の研究機関から生まれたベンチャ−企業を計上すれば、6000社を超える。現在、中国のIT産業をリ−ドしているのは聯想、北大方正、清華同方など産学連携型企業である。こうした活発な産学連携の展開は、情報サイクルの短縮、ベンチャ−企業の育成、ハイテク分野における先進国とのギャップ縮小、大学の活性化、雇用の創出など多大な役割を果たし、中国のエコノミックパワ−の1つとなっている。一方、01年末時点で、日本の大学発ベンチャ−企業は合計で263社、アメリカと中国に比べ桁が違う。産学連携の遅れによって日本の国際競争力の低下がもたらされ、経済停滞の一因ともなっている。
3つ目の違いはグロ−バルな「頭脳集積」である。国連貿易開発会議「2001年世界投資レポ−ト」によれば、多国籍企業上位500社のうち、約400社が中国で2000以上の生産拠点を持ち、100社以上が中国でR&Dセンタ−を設置している。一方、中国も外国留学組という人的資源を生かし優秀な頭脳を集めている。この20年間、日米欧先進諸国に留学した中国人は合計40万人に達し、そのうち3分の1に相当する14万人はいま頭脳回帰となっている。しかも、そのうちの多くは今、産官学のキ−パソンとなっている。
4つ目は、中国という「世界の工場」の技術水準は日本に比べればまだ大きな開きがある。例えば、中国は世界第6位の経済大国だが、R&D投資が世界全体の0.6%、特許登録数が世界全体の1.6%に過ぎない。しかも、特許登録数のうち、国内企業・機関が登録したものは僅か28%、残る72%が外国企業・機関のものである。「経済大国」の裏には「技術小国」の実像が浮き彫りになる。
従って、われわれは中国を「世界の工場」として捉える場合、その実像の部分と虚像の部分を複眼的に等身大に捉えるべきである。
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見落としてはいけない中国ビジネスリスク
現在、日本企業は既に中国を最重要市場として認識している。今年5−6月、日本貿易振興会(ジェトロ)はメンバ−ズ企業2485社に対しアンケ−ト調査を実施した結果、回答を得た企業897社のうち、「日本企業にとって販売先としての重要または最重要市場はどの国(地域)か」(複数回答可)という質問に対し、「中国」を「重要市場」と答えたのは72.2%、「最重要市場」と答えたのは25.3%で、いずれも米国を上回り1位となっている。また「日本企業の今後開拓しょうとする市場はどの国(地域)か」という質問に対し、「中国」と回答したのは54.1%と断然1位を占め、2位のASEAN諸国(24.8%)、3位の米国(21.1%)と大きくかけ離れている。
上記アンケ−ト調査結果を裏付けるのは、実際に起きている日本企業の雪崩のような中国進出である。中国側の統計によれば、01年、日本企業の対中直接投資は契約ベ−ス金額で前年比47%増、実績ベ−スで49%増といずれも史上最高を記録した。今年上半期はさらに前年同期比8.5%(実績ベ−ス)と記録を更新した。特に、最近では日産自動車(1200億円)、トヨタ(1000億円)などこれまであまり見られなかった大型対中投資案件が目立っている。
ただし、日本企業は中国に進出する時、次の2点に留意する必要がある。1つは明確な中国戦略を持つことだ。つまり、中国の市場をタ−ゲットとするか、中国を生産拠点や部品調達先として活用するか、中国の人材を活用するか、或いは市場、工場、人材を総合的に活用するか。進出の目的をはっきりさせた上に具体的な中国戦略ビジョンを描くべきである。
2つ目は中国ビジネスリスクを見落とさないことである。確かに、WTO加盟の実現、08年北京オリンピック開催の決定などビジネスチャンスに直結するものが多い。しかし一方、地域格差の拡大、金融リスクの増大、失業問題、腐敗の蔓延、WTO加盟の衝撃などビジネスリスクも数少なくない。
特に、WTO加盟に伴う日本企業と中国企業、日本企業と欧米・台湾・香港企業、日本企業同士間の競争激化が避けられず、優勝劣敗の市場審判が過酷なものになる。上海地域を例に、競争が熾烈のため、00年に1139社の外資系企業は撤退または倒産し、そのうちの213社は日系企業であった。われわれは中国市場に目を向ける時、こうしたビジネスリスクを見落としてはいけない。
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巨大隣人中国とどう向き合うか
21世紀に巨大隣人・中国とどう向き合うか。これは日本にとって最大課題と言っても過言ではないだろう。
私見だが、日本と日本企業は中国に対し次の3つの対策を取るべきである。いずれも中国語の四文字熟語であるが、今年4月に筆者が竹中大臣に進講した際に提言したものでもある。
1つは「疎而不堵」(疎通してふさがず)で、わかり易く言うと洪水対策である。中国の経済大国化、巨大市場化、世界の工場化は既に止めようもない潮流となっており、日本は「堵」(ふさぐ)という方策をとれば、氾濫した洪水のように日本に大きな被害をもたらすことになる。むしろ中国をWTOルール遵守に誘導していくという「疎通」の対策をとれば日本の国益に適う。
2つ目は「趨利避害」(利に赴き害を避ける)である。中国経済の台頭は日本にとって「両刃の剣」のように、「利」と「害」という両面がある。市場、生産拠点と部品調達先として中国を旨く活用すれば、日本の利益になり、「害」にはならない。「害」のみに着眼する「中国脅威論」のような非建設的な発想では、好機を失うだけで「害」を避けることもできない。
3つ目は「揚長避短」(長所を活かして短所を回避する)である。日本企業の長所(優位性)は優れた技術力にあり、短所は「コスト高」にある。こうした長所を生かし短所を回避するために、日本企業は高付加価値がつく新産業、新技術、新素材、新製品の創出に注力すると同時に、コストが安いだけでなく品質に改善も見られる中国企業との分業体制を積極的に構築していくべきである。
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