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【中国経済レポ−ト】
【中国経済レポ−ト】
爆食型経済からの脱却 中国06年は8・8%成長

沈 才彬
『エコノミスト』別冊2006年2月13日号

国際通貨基金(IMF)が2005年9月21日に発表したリポート『世界経済の展望』によれば、03年の4・0%、04年の5・1%成長に続き、05年と06年も4%台の成長を保つ見通しが示され、好景気は続いている(表1)。

●世界同時好況と中国インパクト

今回の世界的な好景気は次の四つの特徴を示している。一つは日米欧、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)、ASEANなど主要国・地域の同時好況である。中国の経済拡張、日本の景気回復および世界同時好況が重なっており、いずれも02年後半から始まったものである。

二つ目は今回の好景気はこれまでのIT景気と違い、その主役は「ニューエコノミー」と言われるIT分野ではなく、「オールドエコノミー」と言われる従来の鉱工業とその関連分野である。 三つ目は素材など川上分野の需要急増と関連分野への波及効果が、世界同時好況を牽引していることである。ここ数年、素材など川上分野はインフレ、中間財は横ばい、川下分野はデフレ状態が続き、価格の面から見ても素材など川上分野が好景気を支えていることが明らかである。

四つ目は中国経済がエンジンの役割を果たしていることである。表2がそれを物語っている。00〜04年世界全体の素材・エネルギー需要増の多くが、中国によるもので、「チャイナインパクト」の絶大さがわかる。

中国のマイカーブームも爆発的だ。00〜04年、世界の自動車販売台数は5780万台から6074万台へと294万台増えた(5・1%増)が、同期の中国の増加台数は298万台(142・6%増)にのぼり、世界の増加分を一手に引き受けた格好だ。

中国の爆発的な需要増加は世界経済に刺激を与え、同時好況を牽引してきた。中国経済は世界の成長エンジンとなっていることは明らかだ。 一方、中国の素材とエネルギーの「爆食」ぶりも浮き彫りになり(図1)、国際市場の価格高騰の要因ともなっている。鉄鉱石を例に取れば、03年中国の輸入量は前年比32・9%増の1億4800万トン、04年同40・5%増の2億800万トン、05年同30%増の2億7000万トン(見通し)と爆発的に増えている(図2)。

中国需要が急膨張した結果、鉄鉱石の国際価格は急騰し、03年30%、04年80%、05年71・5%と驚くほどの値上がりを記録した。中国は鉄鉱石市場の価格を左右する最大のプレーヤーとなっていることは明らかである。

●避けられない経済調整

しかし、環境や資源にあまり配慮せぬ中国の「爆食型成長」は既に限界にきており、「省エネ・節約型成長」への転換、「量の拡大」から「質の追求」への転換を行わなければ、高度成長の持続が難しい。そこで中国政府は、資源や環境に配慮し、人間と自然の調和、経済と社会の調和、経済と政治の調和を主な内容とする「調和の取れた成長」を目指す方針を打ち出した。この方針は、06年からスタートする第11次5カ年計画の中心的なテーマとなっている。

「爆食型成長」から「省エネ・節約型成長」に本格的に転換すれば、経済調整は避けられない。調整局面に入れば、9%台の高度成長は期待できず、成長の減速が予想される。

ただし、今の中国経済はまさに走行中の自転車のように、一定の速度を保つことが必要である。また、北京五輪(08年)、上海万博(10年)も控えているため、仮に調整期に入っても、急ブレーキがかかるとは考えられず、中国経済は減速があっても失速はないだろう。

06年は8・8%成長へ減速し、また10年の上海万博開催までは年率8%成長が続くだろう。

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