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【中国経済レポ−ト】
【中国経済レポ−ト】
"爆食型"経済成長はもう限界 06年に中国は本格調整期入りへ

沈 才彬
『週刊東洋経済』2005年7月9日号記事

中国は1人当たり資源占有量が石油で世界平均の11%、天然ガスで5%と資源小国だ。そのうえエネルギー効率は世界平均の半分と低い。その中国が原油で世界全体の8%、鋼材で27%を消費しているのだから、爆食型成長を従来どおり続けるのはもう限界に来ている。中国政府もこの危機感から政策転換を図りつつある。来年の次期5カ年計画にこの政策転換が採択される予定で、2006年に中国は本格的な経済調整に入るだろう。

 今年1〜5月の輸入は昨年同期の36%増から13・7%に減速した。1〜4月の輸入は鋼材が数量で37%減、鉄スクラップが20%減、石油製品が15%減、原油も昨年同期の35%増から4%増となっている。素材やエネルギー(資源)の輸入面では明らかに調整期に入っている。

 日本の対中輸出は円ベースで03年が33%増、04年も2割成長した。03年には輸出全体の伸びの7割を対中輸出増が占めていた。中国特需の形で日本は景気回復を果たしたわけだ。ところが今年1〜5月期には対中輸出の伸びは輸出全体の伸びと同じ4・9%になった。日本の景気回復は内需主導にシフトしている。中国が今後本格調整期に入るとなると、日本の対中輸出が去年までのように、今年、来年も2〜3割成長することは望めそうにない。

 中国のWTO加盟の条件に輸入関税引き下げなどがあった。特に過去3年の輸入関税率の引き下げ幅は大きく、日本の対中輸出は大幅に増えた。関税引き下げは06年まで続くが、その幅は縮小するため、この面からも対中輸出は鈍化する。

 ただし、心配されるような中国経済の急減速は考えられない。昨年までの9・5%の成長は過熱しすぎで、徐々に減速はするものの08年の北京五輪、10年の上海万博を控え、7・5〜9%の適正水準に収まるだろう。中国特需の恩恵を受けていた鉄鋼、化学、造船、海運などへの打撃は避けられないが、日本の対中輸出全体がマイナスになることはない。増加幅が減少するだけだ。

 中国では1996年以降、農村からの流入もあって、都市人口は毎年2000万人ずつ増えている。農村に比べ所得が6倍も高い都市人口の増加で、個人消費は今年1〜4月には12・8%と2ケタで増加した。投資、輸出に比べ役割の小さかった個人消費が今後成長牽引の主役になる可能性が高まっている。都市人口が増えれば、その分の住宅が必要で、鉄やセメントなどの建設資材需要も生じる。

 問題は中央政府のマクロコントロールに限界があることだ。経済成長率が実績や自己評価につながる地方政府(の役人)は中央の言うことを聞かない。03年後半から引き締めに入った4分野のうち、アルミ、セメントでは過熱投資が収まったが、これも競争激化による赤字転落という市場メカニズムの結果の側面が大きい。鉄、不動産に至っては、(中央政府の方針にもかかわらず)なかなか過剰投資は収まらない。

 靖国リスクもある。小泉首相が靖国参拝をすると経済にも悪い影響を与える公算が高まる。(談)

 

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