【中国経済レポ−ト】
中国経済・調和のとれた成長政策へ転換−経済は来年から調整局面入り−
沈 才彬
『週刊東洋経済』2005年6月4日号記事
現在の中国経済にはいくつかの特徴がある。第1に経済規模の急拡大。この3年でGDPは1.4倍になった。第2に、その成長を大量生産と大量消費が引き起こしている。第3に、その結果として素材・エネルギーを'爆食'していることだ。中国のGDPは世界シェアで4%だが、石油の8%、鋼材の27%、石炭の31%、セメントの40%を1国で消費する。GDP1万j当たりのエネルギー消費は日本の4.4倍。インドに対しても1.6倍。中国のエネルギー効率は最悪だ。
この'爆食'が経済にさまざまな歪みを生む。まず投資過熱によるバブルの発生。さらに著しい環境破壊。今や中国は世界一の汚染国だ。また、安全より生産を優先したために炭鉱爆発事故が多発、数多くの人命が失われている。
一方、中国の一人当たりの資源占有率は世界水準以下。つまり、エネルギー効率を是正しないと経済成長の持続は不可能だ。中国政府はそれを強く意識している。「爆食型成長」から「調和のとれた成長」への転換をうたう第11次5ヵ年計画を策定中で、来年3月の全国人民代表大会で採択される。その結果、中国は来年から調整局面に入る。成長率はこれまでの9%台から7.5%〜8%の間に減速。日本に及ぼす影響は輸出鈍化だ。鉄鋼、化学など素材や、海運、造船、機械などはダメージを避けられない。ただ、環境ビジネスなど出番が増える分野もある。
人民元の切り上げ(変動幅拡大)については、政府はすでに準備を終えたが、外圧に屈した格好にならないタイミングを待っている。実施は年内で変動幅は5%だろう。国家統計局は5%なら輸出は10%成長が可能と予測しており影響は軽微だ。むしろコスト安に安住する中国企業の生産性を高めるチャンスとなる。
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