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【中国経済レポ−ト】
【中国経済レポ−ト】
銀行は不良債権が重荷 抗日行動は誠意で対処を

沈 才彬
『金融ビジネス』2005年5月号取材記事

中国経済は2002年から拡張期が続いている。今回の特徴は、加速度的な規模の膨張。過去3年間でGDPは1.5倍の1兆6000億ドルになった。GDPが1兆ドルを超えると成長が加速する。中国も06年には2兆ドル弱でフランスを抜いて4位になる。10年にはドイツ、20年には日本と並び、50年にはアメリカを抜いて世界最大になるだろう。人民元切り上げがあればペースはさらに速まる。購買力平価では03年に6兆ドルで日本を上回っている。主要5産品(石油、穀物、肉、石炭、粗鋼)のうち石油を除く4品目の消費も世界最大だ。

一方でバブル懸念が増大している。昨年末、中国政府は金融引き締めという解熱剤を投入し、経済は軟着陸に向かっている。今後は景気が減速しても失速はない。ただ、素材・エネルギーの"爆食"は限界に来ており、生産効率の悪い成長方式からの転換が求められている。

04年のマネーサプライが前期比14.6%増。銀行貸出も外貨準備も増える中で株式市場は低迷している。上場企業は同90社増えたが、時価総額は逆に同12.7%減っている。中国人民銀行は「05年末までに不良債権比率を15%以下(銀行セクター全体では04年末13%強)に低下させなければならない」と大号令をかけた。ただ分子の不要債権額を減らすのは難しいから、ここ2〜3年は分母の貸出増強に走り出した。経済過熱の一因になっているだけでなく、問題の先送りだ。

WTOとの約束で06年末までに人民元取り扱い業務を開放すれば、外資系金融機関との競争が激しくなる。彼らは住宅ローンや自動車ローンを拡大している。外資系同士、あるいは中国国内銀行からの人材争奪戦も熾烈だ。

今後のリスクは不良債権問題の深刻化。03年の中国のGDPは日本の3分の1強程度だが、不良債権総額がGDPに占める割合は同3.6倍だ。06年に人民元業務が開放されると、優良な債権(=優良な顧客)の移転、優秀な人材の移動という二つのシフトが起こりうる。国内銀行には不良債権だけが残り、金融危機となる懸念もある。

その先は数年おきにリスクが断続する。08年は北京五輪と同時に台湾総統選挙がある。中国からの独立が再び争点となる。次は「2010年問題」。経験則では一人当たりGDPが2000ドルを突破すると民主化運動が定着する。もし天安門事件のような事態が起これば混乱は避けられない。さらに「2015年問題」。中国のエネルギー需要を世界が賄えず石油危機となれば、成長が挫折するリスクがある。地域の経済格差、個人の収入格差、環境問題もある。

日系企業には歴史問題の壁も厚い。今年は抗日戦争60周年で「政冷経熱」状態。中国国民の不満爆発の発火点が低くなっており、抗日行動も頻発している。長期的な視点に立って、先方を刺激する言動は控える。トラブルには迅速かつ誠意を持って対応して相互理解を深めるべきだ。

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