【中国経済レポ−ト】
中国社会を牛耳り始めた「バナナ族」
沈 才彬
『週刊東洋経済』2005年1月22日号
2004年12月聯想集団(レノボグループ)が米IBMパソコン部門を12億5000万ドルで買収すると発表した。設立わずか20年で米国企業を買収したのも驚かされるが、そのCEOにも注目したい。楊元慶氏、40歳。01年36歳の若さでCEOに就任した。
イギリス留学の経験を持つ楊氏のような欧米留学組が今、急速に中国指導者層に増えてきている。彼らは中国人の顔をしていながら欧米人の意識を持つ、外は黄色で中身は白いという意味から「バナナ族」と呼ばれている。
留学組は総称して「海帰」と呼ばれ、日本への留学組は「留日派」と称される。残念ながら留日派は中国社会ではバナナ族のように力を持たない。
産業界のトップにはすでに数多くのバナナ族がいる。インターネット関連大手の捜狐(ソフー)の張朝陽総裁は米マサチューセッツ工科大学出身、ソフト開発最大手、東方軟件会長の劉積仁会長もアメリカ留学組だ。政策決定にもバナナ族は影響を行使し始めた。胡錦濤政権を支える29人の閣僚中7人は欧米留学の経験を持つ。副大臣、局長クラス、地方の幹部も欧米留学組が数多い。政策ブレーンの胡鞍鋼氏もバナナ族。著名なエコノミスト、呉敬連氏もバナナ族の1人だ。大学の学長、マスコミにもバナナ族が多い。
彼らの特徴は国際的な感覚を持ち、決断が早く、国際的な人脈を持つということだ。聯想のIBMパソコン部門買収はまさに、バナナ族の特徴が出たといえるだろう。
政府も政策的にバナナ族を輩出しようとしている。01年に合意文書を取り交わし、45歳以下の局長クラスを毎年60人ハーバード大学へ派遣している。1〜2年の留学期間を経て、第一陣の留学組が中国へ戻り始めた。この他、地方も独自に若手を米国へ留学させ始めた。広東省、山東省などが毎年数十人規模で米国留学させている。
留学組の中には中国に戻らず、そのままアメリカ企業に就職するものも出てきているが、それも広い意味での人脈になる。
* トップに戻る *