《次のレポ−ト レポートリストへ戻る 前回のレポート≫

【中国経済レポ−ト】
【中国経済レポ−ト】
胡錦濤続投のシナリオもあり得る−ポスト胡錦濤をどう見るか−

多摩大学教授 沈 才彬

多摩大学教授沈才彬の新著「中国経済の真実−上海万博後の七つの不安−」が昨年11月にアートディズ社に上梓されました。新著の出版を記念するため、さる1月28日、「沈才彬出版記念講演会」が日本工業倶楽部で開催されました。多摩大学学長寺島実郎氏のほか、根本二郎日本経済団体連合会名誉会長・日本郵船株式会社相談役、槍田松瑩日本経済団体連合会副会長・三井物産株式会社取締役会長、山岡建夫日中経済協会副会長・JUKI株式会社代表取締役会長、原田明夫元検事総長・日本郵政社外取締役、野田一夫財団法人日本総合研究所理事長、神成敦トヨタアセットマネジメント株式会社執行役員(沈教え子代表)ら7人がご来賓としてそれぞれご挨拶を行いました。

「中国巨大市場の真実とその行方」を演題とする出版記念講演では、沈教授は、@ベルリン壁崩壊後、旧ソ連・東欧社会主義諸国は相次いで崩壊したが、なぜ中国だけが崩壊するどころか、急速な台頭を遂げたのか、A中国は鳩山政権をどう見ているか、B中国の政治動向、Cなぜ中国は一番先にアメリカ発金融危機から脱却し、景気回復を実現したのか、D2010年中国経済の見通しと巨大市場の行方、E中国ビジネスのリスク、F迫られる日本企業の戦略転換、Gなぜ日本に「親米睦中」の外交戦略が必要なのか、などの問題を巡って1時間にわたり講演を行いました。

そのうち、中国の政治動向の部分では、ポスト胡錦濤をどう見るかにつき、沈が「2013年に胡錦濤政権から次の政権へのバトンタッチというシナリオがある一方、胡錦濤氏続投のシナリオも十分あり得る」という見方を示しました。

沈の話によれば、「中国の憲法では国家主席、副主席、首相、副首相の任期は連続二期を限度としているが、共産党総書記及び党中央軍事委員会主席の任期については憲法でも党規約でも制限が明記されていない。党の全国代表大会で選出されれば、二期も三期も続投が可能だ。実際、胡錦濤氏の前任である江沢民氏は党総書記を三期13年(1989−2002)務めてきた」。「現在、二期目の胡錦濤政権は安定的な政権運営を行い、経済の高度成長を保っている。国民の支持率が高く、党内では胡氏の続投を求める声が強まっている。従って、2012年秋に開催予定の党全国代表大会で、胡錦濤氏は総書記、党中央軍事委員会主席を三度目選出される可能性は十分あり得る。その場合、胡錦濤氏は国家主席を兼務せず、習近平さんに譲る可能性が大きい」と述べました。