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【中国経済レポ−ト】
【中国経済レポ−ト】
迫られる日本企業の戦略転換―アメリカ中心から新興国中心へ―

多摩大学教授 沈 才彬

(《新華社ネット》コラム「沈才彬の中国論談」シリーズ第7回)

いま日本企業の海外戦略は転換を迫られている。まずはアメリカ中心から新興国中心に軸足をシフトするという戦略転換である。

一つのアンケート調査の結果を紹介する。二〇〇九年二月、日本貿易振興機構(JETRO)は海外事業を展開するジェトロ・メンバーズ企業3283社を対象に、「海外拠点所在国・地域別のアメリカ発金融危機の日本企業の影響」をテーマにアンケート調査を実施した。

アンケート調査は、アメリカ発の金融危機の影響で「業績が大いに悪化する」、「やや悪化する」「特に影響はない」という三つの質問を設定して、回答を求めたところ、928社から有効回答を得た。「業績が大いに悪化する」と答える比率は、アメリカ51・5%、西欧諸国51・6%に対し、ベトナム46・2%、香港43・8%、中国38・2%となっており、新興国・地域は比較的に低い。特に中国は、今回のアンケート調査の対象となる50数カ国・地域のうち、比率が4割を下回るただ一つの国となっている。欧米進出の日本企業は金融危機によって大きな打撃を受ける一方、中国、ベトナムなど新興国進出の日本企業は受けた打撃が相対的に小さいという特徴が浮き彫りになっている。

この特徴は次の質問の回答からも裏付けられている。「特に影響はない」と答える比率は、中国進出の日本企業は14・8%で最も高く、続いてはベトナム14%、香港10・7%の順となっている。それに対し、アメリカ進出の日本企業は8・6%、西欧7・6%と比率が低い。欧米先進国より中国など新興国に進出している日本企業の影響が相対的に小さいことがわかる。

なぜ、今回のアメリカ発の金融危機による実体経済への打撃が先進国の中で日本が一番大きいのか。ジェトロのアンケート調査の結果から理由の一端が伺えるだろう。つまり、これまでの日本企業の海外戦略は、アメリカ中心で展開してきた。ところが、今回の金融危機の震源地はまさにアメリカであり、金融危機の津波は日本企業のアメリカ中心の海外戦略を直撃した結果といえる。

そこで日本企業の海外戦略の転換も見えてくる。つまり、アメリカ中心から中国をはじめとする新興国中心にシフトしなければならない。これは日本企業が行うべき一つ目の戦略転換だ。

                      (2009年11月9日)