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【中国経済レポ−ト】
【中国経済レポ−ト】
問題の核心は過剰なアメリカ依存にあり

多摩大学教授 沈 才彬

(《新華社ネット》コラム「沈才彬の中国論談」シリーズ第6回)

前回のコラムでは、問題提起として、「アメリカ発の金融危機」と言われるのに、なぜ日本の株価下落のほうも、経済成長率の下げ幅のほうも、震源地のアメリカより激しいのかについて述べてきた。

つきつめて言えば、日本の経済構造も、企業の海外戦略も、日本人の意識も極端にアメリカに依存している。これは今起きている問題の核心だ。

戦後、日本の経済・貿易構造から政治・外交政策まで、すべて米国を中心としてきた。特に日本の輸出構造の米国依存は際立ったものだった。一九五八〜七三年は正に日本の高度成長期にあり、対米輸出が一貫して首位の座にあった。比率では全体の3、4割まで占めていた。こうした対米依存の貿易構造は高度成長を支える最も重要な外部要素と言える。

この時期は日米安保体制の確立期でもあり、対米依存の貿易・経済構造は日米政治・軍事同盟を支える経済基盤ともなった。

そしてこの対米依存の輸出構造は第1次、第2次のオイルショックの時を除いて、90年代初頭まで維持されてきたのである。

一九八〇年に西ドイツのシュミット首相が来日した時、日本の対米輸出が輸出全体の3〜4割を占めるのを知って、「だから日本はアメリカにしか友人ができないのだ。ここに日本の弱点がある」と語った(中村正則著『戦後史』94〜95頁)。この貿易・経済構造と日米安保体制が続く限り、軍事・外交・経済面における対米追随・依存の仕組みや構造は変えようがないのである。

ところが、冷戦終結後、特に21世紀に入ってから、日本の貿易構造も輸出構造も大きく変わり、アメリカ中心からアジア中心、特に中国中心に変わった。象徴的な出来事は二〇〇四年に起きた貿易構造の米中逆転、二〇〇七年起きた輸出構造の米中逆転である。中国はアメリカに代わって日本の最大貿易相手国、最大の輸出先となった。 しかし、貿易構造、輸出構造が大きく変わったにもかかわらず、日本の政治構造はもちろんのこと、経済構造も日本企業の海外戦略も旧態依然のアメリカ依存である。それは、アメリカが日本の最大のドル箱でありつづけているため、政府は経済構造の改革を、企業は海外戦略の転換も怠ってきたわけだ。極端なアメリカ依存のため、そのツケは金融危機をきっかけに一気に噴出したのだ。

結果は惨憺たるものだった。最大のドル箱が崩壊した。それどころか最大の借金箱になっている。極端なアメリカ依存はもう限界だ。転換せざるを得ないときが訪れた。

              (2009年10月26日)