今年3月中旬、3カ月ぶりに上海出張へ行ってきた。「中国速度の象徴」と言われる上海リニアモーターカーを試乗し、躍進する中国の実態に筆者は強烈な印象を受けた。
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上海リニアモーターカーと筆者=03年3月15日 |
上海リニアモーターカーラインは世界初のコマシャルベ−スであり、浦東新区にある地下鉄龍陽路駅から浦東国際空港を結ぶもので、全長30キロ。ドイツの超高速リニア「トランスラピッド」を採用、建設費は鉄道本体だけで60億元(約7.2億ドルに相当)、総工費は90億元にのぼるという。年間利用者数は1億5000万人と予定されている。
上海リニア線は2001年3月2日着工、昨年12月に完工、建設期間はわずか1年10カ月。年内に運行開始が予定されているが、現在は試運行中で、週末は一般客にも開放している。
3月15日、上海市政府発展研究中心の協力でリニアモーターカー試乗が実現できた。試運行中のリニアモーターカーチケット価格は、龍陽路〜浦東国際空港の往復で一般席150元、グリ−ン席300元。上海市民の平均月収(約2000元)を考えると、今の価格は高すぎる。正式運行の場合、片道一般席50元以下に抑えないと、一般市民に敬遠されるだろう。
試乗の時、車内の時速表示を見守っていた。最高時速は設計通りの431キロに達し、それは僅か数秒間だった。列車は名実ともに超高速で飛ぶように走っており、車外を見ると、平行線の道路を走っている車は後ろ向きに走っているように見える。あっという間に終点につき、30キロの走行時間は8分に満たなかった。あまり揺れを感じず、その安定さは日本新幹線乗車時の感覚とほとんど変わらない。
試乗後、龍陽路駅を出ると、高層ビルの林立が目に入る。僅か10年で、上海市の20階以上の高層ビルの数は東京都を遥かに上回り、世界一となったという。市政府の関係者のによれば、いま建設中または企画中の高層ビルはまだ2000棟もある。
タクシ−で宿泊ホテルへ帰る途中、「高」という上海市のイメ−ジが筆者の頭に浮かんだ。高速リニアモーターカー、高速道路、高層ビルなど、実体は上海人の「高速度、高効率」を追究するチャレンジ精神と重なっている。現在、中国国内ではリニアモーターカーの安全性を疑問視し、北京〜上海間高速鉄道建設へのリニア方式導入に反対する声は依然根強いが、上海リニアモーターカー建設に示される中国人のチャレンジ精神は評価すべきである。