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【中国経済レポ-ト】
【中国経済レポ-ト】
中国自動車減税の最大の受益国は日本だ
多摩大学教授 沈 才彬
(《新華社ネット》コラム「沈才彬の中国論談」シリーズ第3回)
前回のコラムですでに述べたように、中国の新車販売台数は今年3月から急速に拡大し、6カ月連続で100万台を突破している。
この新車販売の追い風となっているのは、中国政府の景気対策の中の減税措置である。
2009年の年初から、年内限定の自動車購入の減税措置が実施され、排気量1.6リットル以下の小型車を購入する消費者たちは、10%の税が半減される。これまで自家用車の保有台数が少なかった農村部と内陸地域は特に、この減税措置から恩恵を受ける。
この期限付き減税措置の恩恵を受け、新車販売は09年3月から増加に転じた。最初は小型車の販売が拡大し、その後、徐々に中型・大型車の販売にも波及している。中国自動車工業協会の統計によれば、09年1-8月、乗用車販売は447万台にのぼり、前年同期に比べ32.7%%増えた。伸び率はバス・トラック・スポーツ車を含む全車販売(29.2%増)より3.5ポイント高い。単月で見ると、8月の乗用車販売は62.9万台で、前年比82.6%も伸びた。伸び率は全車販売より1ポイント高い。やはり小型車の貢献が大きかった。
中国政府の減税措置は国産車のみならず、外国車の販売にも恩恵を与えている。諸外国のうち、一番大きな恩恵を受けているのは、まさに日本の自動車メーカーである。2009年上半期、乗用車販売324万台のうち、日本車は81万台にのぼり、全体の25%を占める。この比率は国産車の29.4%には及ばないが、ドイツ車の19.7%、米国車の12.6%、韓国車の9.6%、フランス車の3.6%より遥かに大きい。好調な中国市場はいま、日本自動車メーカーの「救世主」ともなっている。
中国で思わぬ大躍進を実現できたのは日産自動車だ。2009年1-6月、同社の中国での乗用車新車販売は対前年比41%増と日系メーカーで最大の伸び率を見せた。
日産の大躍進の理由は2つある。1つは日産の現地法人である東風日産(中国東風自動車との合弁会社)は取り扱う8車種のうち、6車種は減税対象となり、同業他社より数が多い。もう1つは東風日産の販売網は、中国の沿海地域より内陸地域のほうに多いことである。保有台数が少なかったため、内陸部の市場の拡大も顕著なのである。
マツダも負けていない。09年4-6月の中国での新車販売台数は前年比26.8%増の4万1279台。一方、日本国内の新車販売台数は同24.7%減の4万868台。中国販売は国内販売より411台多く、四半期としては初めての「日中逆転」となった。日本国内の新車販売の不振が続き、先行き不透明感が強まる中、マツダの中国での勢いが続けば、通年でも中国での販売台数が国内販売を上回る可能性が出てくる。
富士重工業の中国での新車販売も好調だ。1-6月の販売台数は前年比7割近く増えている。特に好調なのは、販売台数の9割を占めるSUV(スポーツ用多目的車)である。1-6月の販売は前年比67%増の1万3100台にのぼった。そのため、富士重工は中国国内の販売店を年内には100店舗まで増やし、2009年の年間販売計画も従来の2万3000台から約2割増の2万8000台に上方修正する方針を明らかにした。
中国進出の先発組であるホンダは上半期の販売増加を受け、中国での2009年の年間販売目標を従来の52万台から55万台に引き上げる方針を発表した。
このほか、08年12月から中国でずっと苦戦が続いてきたトヨタ自動車も、09年5月に久しぶりに朗報が出た。同月の新車販売台数は前年同月比16.8%増の5万1000台に達した。
09年上半期、日本自動車産業の国内生産332万台、国内販売218万台と、前年同期に比べてそれぞれ45.2%減、21%減を記録し、8年ぶりのダブル減少となっている。国内市場の回復に時間がかかる中、自動車各社は一斉に中国事業を拡大し、中国市場への依存が一層強まりそうである。
(2009年9月24日)