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【中国経済レポ−ト】
【中国経済レポ−ト】
3つの「米中逆転」が意味すること
多摩大学教授 沈 才彬
(《新華社ネット》コラム「沈才彬の中国論談」シリーズ第2回)
金融危機の影響で日米欧先進国の景気低迷が続くなか、中国経済は成長のスピードが減速しているものの、巨大市場の存在感は逆に増大している。日本経済の「中国頼み」傾向が一層強まり、新車販売の米中逆転、日本の輸出構造における米中逆転、来日外国人数の米中逆転という3つの「米中逆転」がその具体的な表れといえる。
まずは、自動車新車販売台数の「米中逆転」だ。3月111万台、4月115万台、5月112万台、6月114万台、7月108万台、8月113.8万台と、中国の新車販売台数は6カ月連続で100万台を突破している。国際比較では、中国は今年1月から7月まで連続7カ月で米国を上回り、1〜7月の累計では前年同期比23.4%増の718万台にのぼり、アメリカの580万台(33%減)より138万台も多い。ちなみに、日本の1〜7月期の新車販売台数は前年同期比19.8%減の261.7万台となり、中国の3分の1強に過ぎない。
09年の世界の新車販売は08年に比べ14%減の5500万台程度になる見通しであるのに対し、中国は17%増の1100万台を超えて、世界最大になるのが確実視されている。言い換えれば、5台のうち1台の新車が中国を走っている。
販売台数は世界一とは言え、普及率で見た場合、米国の100人に80台、日本の100人に60台に比べ、中国は100人に5台という低い水準にとどまっている。自動車市場のさらなる拡大の余地が十分にあることが明らかであり、中国の巨大市場をめぐる日米欧自動車メーカーの争奪戦が熾烈さをますます増している。
2つ目は日本の輸出構造における「米中逆転」である。財務省の貿易統計によれば、09年2月から7月まで6カ月連続で、中国(香港を含まず)向けの輸出が米国向けを上回る。1〜7月の累計で中国向けは5兆3876億円となり、アメリカ向けの4兆6302億円より7574億円多い。日本の輸出全体に占める中国の割合は、18.7%にのぼり、米国の16%より2.7ポイント多い。中国は単独で米国に代わって、日本の最大の輸出先となっているのだ。
香港を含む中国向けの日本の輸出は、07年と08年、すでに2年連続で米国向けの輸出を上回っている。しかし、香港を含まず、中国単独で米国を抜くのは今年上半期が初めてだ。09年通年も中国向け輸出が米国をしのぐ確率が高い。この米中逆転は財務省の貿易統計開始以来の初となり、日本の貿易史においても画期的な意味を持つ出来事といえよう。
3つ目は日本を訪れる外国人の国別割合は中国が米国を上回るという米中逆転だ。07年に日本を訪れた中国人は94万人で、米国人の81万人を上回り、初めて米中逆転した。08年は中国100万人、米国人76万人で、米中間のギャップが拡大した。09年1〜7月は中国54万人、米国人40万人で米中逆転が常態化している。
この3つの「米中逆転」の背景に共通するものは中国市場の巨大化である。中国市場を抜きにして日本の景気動向も産業の発展も語れない現実がある。
(2009年9月15日)