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【中国経済レポ-ト】
【中国経済レポ-ト】
沈才彬講演要旨:「日本企業は戦略転換を」―中国経済の行方展望―
《十勝毎日新聞》2009年6月25日
内外情勢調査会帯広支部(高橋勝坦支部長)の懇談会は6月24日正午、帯広市内の北海道ホテルで開かれ、多摩大学教授の沈才彬(しん・さいひん)氏が「中国経済の行方と日本への影響」と題して講演した。豊富な統計資料や現地レホートを基に中国経済の現状と未来を展望、日本と相互依存が強まる「日中融合」の時代に向け、十勝をはじめ日本企業の戦略転換を求めた。
米国発の金融危機で減速した中国経済は「コップ半分の水」を例に楽観論と悲観論に分かれていると指摘。3月末の訪中時に受けた印象として「落ち着きや期待感が戻った」と述べた。
期待感の背景には①株価の急騰、②世界一になる見通しの自動車販売台数、③不動産売買契約の件数と売上の増加―の3つの要素を挙げ、「経済成長率は今年は7%台はキープでき、来年は9%の可能性もある」と予測。共産党一党支配ゆえに「政変」に弱い反面、「外部危機」には強い特質を語った。
中国のGDP(国内総生産)は2010年にも日本を抜いて世界第二位になる見込み。上海万博(2010年)以降は要注意の時期としながらも、「存在感が大きくなるので日本企業はどう対応するかが重要になる」と強調。中国を工場ではなく巨大市場ととらえるなど戦略転換を求めた。
今後の日中関係は友好よりも相互依存、補完関係が強まる「融合」になると展望。「北海道や十勝は欧州風の建築、雪や温泉など本州にない魅力があり、農産物、食品も高品質。日中融合の時代に備えて、十勝の魅力を作り、中国の市場に売り込む努力を」と語った。 (安田義教)
●「沈才彬プロフィール」1944年、中国江蘇省出身。81年に中国社会科学院大学院修士課程を修了し、東大、早稲田大、お茶の水大、一橋大の客員研究員を務めた。93年に三井物産戦略研究所に移り、2001年から同研究所中国経済センター長に就任。08年4月から多摩大教授。現代中国の政治・経済の論客。豊富な現地情報を基にした分析で、講演会やセミナー、テレビなどで活躍している。