【中国経済レポ−ト】
中国の景気回復は本物か―多摩大学教授・沈才彬氏に聞く(4)―腐敗根絶に政治改革が必要―
2009年5月11日《世界日報》
−−中国経済の強みは、どういう点にあるのか。
中国は大陸国家と海洋国家の二つの特性を兼ね備えている。沿海地域が金融危機の影響受けている。ところが内陸地域はもともと、外需依存度が低いため、その影響は限定的なものにとどまっている。成長率をみれば内陸のほうが沿海部より高い。内陸部が外部危機の防波堤になっている。
これが中国の強みだ。内陸地域の昨年の成長率は12・3%、沿海地域の平均11・5%より0・8%高い。ところが中央政府の発表では、昨年の中国経済成長実績は9%となっている。
−−どういうことか。
中国の統計を100%信用してはいけない。地方政府の統計には、水増しの問題がある。
なお今年前半、要注意なのは過大評価ではなく過小評価だ。つまり、地方がどこでも厳しい厳しいといって、政府から大型予算を取り付けようとする。厳しさの“水増し”がある。前半は厳しい数字を出しておいて、後半にいい数字をたたき出すことで、自分の実績を演出できるからだ。
−−今回の金融危機がもたらした政治的な影響は。
今回の金融危機で資本主義の国では、政権が崩壊した国はいくつかあった。しかし、社会主義の国では、政権が崩壊した国は今のところ、ひとつもない。「資本主義の退潮」と「社会主義の台頭」、こうした一時的な社会現象は避けられない。しかし、社会主義が資本主義に代わるということもない。あくまでも一時的な現象だ。
−−欧米で問題となった強欲資本主義にしても、共産主義国家の汚職・腐敗問題にしても、超えないといけないのは倫理問題ではないのか。
中国で立ちはだかる最大の壁は、政治の民主化問題だ。腐敗を是正しようとしても、なかなか効果があがらない。共産一党支配の国だから、共産党がすべての組織をチェックする権限を持っている。ところが共産党をチェックする機関が存在しない。日米欧先進国では三権分立があり、第四の権力としてのマスコミの力もある。中国ではまだマスコミの自由はない。民主主義に移行しないと腐敗の根絶は多分無理だ。中国も将来的には、民主主儀のコストを払わないといけない。腐敗を根絶させるには、経済改革だけでは無理で、政治改革が必要になる時がくる。