【中国経済レポ−ト】
中国の景気回復は本物か―多摩大学教授・沈才彬氏に聞く(1)―投資と消費がけん引役に―
2009年5月11日《世界日報》
中国では昨年、株価の下落率は65%と主要国の中でロシアに次ぐ低迷ぶりを記録した。それが今年、年初来約36%上昇しているだけでなく、活気に満ちた車市場や不動産売買の堅調ぶりなど明るさが鮮明となりつつある。下落し続けた人民元も上昇に転じ、今月上旬に昨年10月水準にまで値を戻した。このまま中国経済は景気回復に転じるのか。今春、上海や広州などで現地を見てきた多摩大学の沈才彬教授に聞いた。 (聞き手=原田 正、池田達夫)
−−上海や広州などで現場を見た上での、中国経済の印象は。
強かった金融危機に対する恐怖感も、今は後退し、逆に落ち着きと期待感を見せている。印象とすれば中国経済は、昨年の第4四半期、もしくは今年第1四半期で底をついた。これから第2四半期か第3四半期から、景気回復に転じる可能性が極めて高い。
ただし、金融危機の影響はまだ大きい。先月、上海、寧波、広州、深?の四カ所を見てきた。いずれも金融危機の影響が大きかった沿海地域だ。基本的に二つの影響があった。一つは資本市場の影響。中国の昨年の株価はマイナス65%と、主要国の中でロシアに次ぐ二番目の下落率を記録した。
さらに実体経済への影響も大きく、輸出が急激に落ち込んだ。これまで中国は二〇〇一年の世界貿易機構(WTO)加盟以後、輸出を毎年、二割三割伸ばしてきた。ところが米国発の金融危機で、急転直下型に急減。今年の第1四半期は、米国向けが14・9%減少、全体では19・7%減少した。これまで二割以上伸びていたのが二割マイナス、つまり四割急落したことになる。
ただし投資と個人消費はそれほど落ちていない。中国経済にとって、これが救いだ。投資は今年第1四半期が28.8%で昨年より高い。個人消費も15%増だ。今年の中国経済のけん引役は、投資と消費になる。
ーー今年の経済成長の見通しは。
政府目標の8%に達しなくても、7%台は維持できるのではないかと思う。
昨年、米国というエンジンが崩壊した。だから、もう一つのエンジンである中国経済に期待がかかる。今年、中国は世界経済の最大のエンジンになることは間違いない。
昨年の株式市場の下落率は65%だった。ところが今年4月末時点では年初来36%上昇している。
株式市場は経済の行方を先取りする側面がある。その意味では、中国経済に対する明るい兆しと見ていい。