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【中国経済レポ−ト】
【中国経済レポ−ト】
2011年中国経済の10大予測

多摩大学教授 沈 才彬
  • 減速があっても失速の懸念がなく、9%成長へ
  • インフレ率は4〜5%
  • 不動産価格の調整局面が続くが、年末からは転換の可能性も
  • 金融引き締め政策は一層鮮明に、金利引き上げは2〜3回あり
  • 人民元切り上げ幅は7%前後、ただし外部圧力が強い場合は5%前後にとどまる
  • 第12次5ヵ年計画が全人代で採択され、民生重視に力点を置く
  • 個人所得税の減税で消費の刺激効果が期待される
  • 新車販売台数は人類史上最多の2000万台前後へ
  • 中国の高速鉄道は海外受注へ
  • 上海株価指数は3500〜4000ポイント
    2010年の中国経済は10%台成長をキープし、引き続き世界経済を牽引する最大エンジンとなっている。それでは2011年、中国経済はどこに行くだろうか?高度成長が持続するか、それとも失速するか。筆者は次の10大変化を大胆に予測する。

    @減速があっても失速の懸念がなく、9%成長へ

    元切り上げ、金融引き締め、日米欧経済の不確定性などによって、2011年の中国経済は減速するだろう。ただし、個人消費が堅調なため、失速する懸念がなく、9%成長は可能。

    Aインフレ率は4〜5%

    2010年政府のインフレ率を3%以内と目標したが、実際、6月から7ヵ月連続で大幅にオーバーした結果となった。11年もインフレ昂揚が続き、通年では4~5%になるだろう。

    B不動産価格の調整局面が続くが、年末からは転換の可能性も

    インフレ昂揚の一因は不動産バブルにある。実際、2010年2月から7月まで6カ月連続で住宅の価格上昇率が10%を超え、明らかにバブル状態となっている。住宅バブルを抑制するために、政府は住宅ローンの規制強化、金利や預金準備率の引き上げなど金融引き締め政策を取っている。従って、住宅価格の調整局面は当面続く見通し。ただし、来年末から再来年にかけて住宅価格は再び上昇に転じる可能性も否定できない。

    C金融引き締め政策は一層鮮明に、金利引き上げは2〜3回あり

    インフレ昂揚になれば、国民の生活に悪影響を及ぼしかねない。特にインフレ率が8%突破すれば国民の不満が一気に高まり、社会不安に繋がる恐れがある。インフレを抑制するために、金融引き締め政策が一層鮮明となり、通年では2~3回の金利引き上げはあり得る。

    D人民元切り上げ幅は7%前後、ただし外部圧力が強い場合は5%前後にとどまる

    インフレ対策の一環として、2011年に7%前後の元切り上げが予想される。ただし、次の2点に注意が必要。1つは、急激な上昇がなく緩やかな元高となること。2つ目は外圧ではなく中国が自主的に行うこと。仮に米国から強い圧力があった場合、それは逆効果となり、5%前後の上げ幅にとどまることになる。外圧に屈した形の元切り上げはない。

    E第12次5ヵ年計画が全人代で採択され、民生重視に力点を置く

    第12次5カ年計画(2011-15年)は経済成長より民生重視の姿勢が打ち出される。国民所得増と生活水準の向上で、伸びる個人消費は最大の成長ファクタとなる可能性が出てくる。

    F個人所得税の減税で消費の刺激効果が期待される

    2011年に幅広い個人所得減税が実施される見通し。消費の刺激効果は期待される。

    G新車販売台数は人類史上最多の2000万台前後へ

    2010年の新車販売台数は1800万台を突破し、人類史上最大を記録する見通し。2011年個人所得の増加が追い風となり、新車販売は2000万台にのぼることが予想される。

    H中国の高速鉄道は海外受注へ

    世界最速・最大規模を誇る中国高速鉄道は、国内ではさらに拡大する一方、高速度、低価格、短工期の攻勢で海外受注獲得へ。日本の新幹線技術と激しく競り合う展開になる。

    I上海株価指数は3500〜4000ポイント

    金融引き締めへの警戒感や09年上海株価指数80%上昇に対する反動もあり、10年中国の株価は調整局面が続き、比較的に低迷だった。11年には個人所得減税、上海ディズニーランドの着工など明るい材料が多く、株価は再び上昇局面に転じる可能性が大きい。