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【中国経済論談】
【中国経済論談】
短期的に底打ちが確認された中国経済
多摩大学大学院客員教授 沈 才彬
・2011年第1四半期から7期連続で景気減速が続く中国経済は、ようやく好転の兆しが出てきた。中国当局の発表による一連の経済指標から見れば、短期的に景気の底打ちが確認され、減速傾向に歯止めがかかった。第4四半期の経済成長率は7.8%前後になる見通しで、8期ぶりに景気上昇に転じる。
・経済成長をけん引する3大要素である輸出・投資・消費の月別推移を見れば、いずれも今年8月に底を打ったと見られる(下表を参照)。
3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月
消費 15.2 14.1 13.8 13.7 13.1 13.2 14.2 14.5 14.9
輸出 8.8 4.9 15.3 11.3 1.0 2.7 9.9 11.6 2.9
投資 20.9 20.2 20.1 20.4 20.4 20.2 20.5 20.7 20.7
鉱工業生産 11.9 9.3 9.6 9.5 9.2 8.9 9.2 9.6 10.1
製造業PMI 53.1 53.3 50.4 50.2 50.1 49.2 49.8 50.2 50.6
・輸出 欧州債務危機の影響でEU向けの輸出は昨年の14.4%増から今年1-11月の▼7%へと大幅に落ち込み、輸出全体も昨年の20.3%から同7.3%へと減速した。ただし、月別で見れば、輸出は今年の7月(1%増)、8月(2.7%)に底が打たれた。アメリカの旺盛なクリスマス需要などで、9月から輸出が拡大しつつあり、同月9.9%増、10月11.6%増となっている。11月はクリスマス需要が一段落し、日中関係の悪化で対日輸出も減少に転じたため、輸出は再び2.9%へ落ち込んだ。通年では政府目標の10%に届かないものの、7%増は達成できると思われる。
・投資 設備投資、不動産投資、インフラ投資を含む固定資産投資は、今年8月の20.2%増が底である。9月に合計55件の大型インフラ投資案件が許可され、投資加速の効果が表れた。9月20.5%増、10月20.7%増、11月20.7%増と月ごとに拡大している。
・消費 7月13.1%増、8月13.2%増と消費の底が確認された。9月から消費拡大の傾向が顕著となり、同月14.2%増、10月14.5%増、11月14.9%増を記録している。特筆すべきなのは年末までの政府による駆け込み消費である。当局の発表によれば、今年1−10期の財政黒字は1兆元(約13兆円)弱で、11月と12月はそれぞれ1兆元規模の財政収入がある。中国の財政年度は1〜12月なので、年末まで約3兆元規模の資金を使わなければならない。これまでの経験則では、年末までの2ヵ月間は駆け込み消費が発生し、景気への刺激効果が見られる。12月消費の伸び率も11月並みかそれ以上と考えられる。
・上記3要素以外に、鉱工業生産指数と製造業購買指数(PMI)も景気動向を占う重要な指標である。この2つの指数も8月に底打ちが確認された。
・生産 鉱工業生産指数は8月8.9%増を底に、9月9.2%増、10月9.6%増、11月10.1%増と月ごとに増加の幅が拡大している。
・購買 製造業購買指数(PMI)50%は景気動向の分水嶺と見られる。50%を超えれば、好景気を示すが、逆に50%を下回れば景気悪化と判断される。8月に49.2%と発表され、景気は予想以上に冷え込んでいる。しかし、8月は景気の底となり、9月から好転する。9月、10月、11月はそれぞれ49.8%、50.2%、50.6%となっている。PMIも底打ちが確認された形となっている。
・要するよう、短期的に中国経済は底が付いたと確認され、今年第4四半期の成長率は8四半期ぶりに好転し、通年は7.8%成長となる確率が高い。このまま景気復調の勢いを保てば、来年8%成長も予想される。
(了)